腎がんなんて俺の人生に何の関係もないと思っていた

平成30年に腎がん(腎臓がん・腎細胞癌)が発覚してから、僕の治療と生活と仕事の記録

慢性炎症と悪液質〜手術前の体調について

ここで、手術直前の時点での、僕の体調の状況を確認しておく。

まず体重は、このとき66キロ台まで落ちていた。健康診断時は70キロほどだったが、記憶だとその前、当時ちょっと太り過ぎなのだが、9月頃には74キロほどあったはずだ。ということは、おそらく8キロほど、10%近く体重減少したことになる。

食欲はかなり落ちていた。思い返すと10月半ば頃まではまともに飲み食いしていて、飲み会にも普通に参加していた。たぶん、10月下旬からあまり食べられなくなっていたと思う。まず酒が飲めない。というより、飲みたいと思わなくなった。僕は普段から自宅で毎日ビール2本程度は空けており、「休肝日」のない人間であったが、それが、全く飲みたくない。そして、揚げ物類などの「胃もたれ系」を全く受け付けなくなった。もちろん、僕は元々鶏のから揚げとか大好き人間だ。それが、三食を食べてはいるものの食べる量は減り、かつ、さっぱりとしたものしか食べられなくなっていた。

相変わらずのだるさ・疲れやすさと、夜間の37度を超える発熱も続いており、高いときには37度台後半にも達した。加えて、夜間に尋常じゃない量の寝汗をかくようになっていた。寝汗が多過ぎたため、当時は夜中に二度も目が覚め、下着を替える必要があったほどだ。手術前の12月のある夜、寝汗で真夜中に目が覚めた際に、下着を替えながら自分の体、胸から腹あたりを触ってみると、すごい熱を持っていて、熱いくらいであった。

さらには夜間の尿量の多さ。夜に何度も目が覚め、夜間だけで4回はトイレに行っていた。

そして、血液検査で見られたとおりの、相変わらずの貧血。

 

がん、特にステージの進んだ進行がん患者では、これらのもっと強い、進んだ症状が見られる。進行がんの状態にある有名人の痩せ細ってしまった姿を、メディア等で目にしたことがあるのではないか。

 

調べてみたところ、これらのことを理解するためのキーワードは、「慢性炎症」そしてがんによる「悪液質」(がん悪液質)ということらしい。

 

一般的にがん患者は、病状の進行に伴い、体重減少、低栄養、消耗状態が徐々に進行していく(上に書いた進行がん患者はこの状況である)。このような状態を「がん悪液質」と呼び、多くの場合、食欲不振を合併している。

この「体重減少・低栄養・消耗状態の進行」は、がんによって引き起こされる「代謝異常」と「食欲不振による摂取量減少」が原因。このメカニズムについて、僕の理解した範囲で書くと、がん患者の体内では…

  1. がん細胞(及び、がんに反応した他の細胞・組織)が、「炎症性サイトカイン」という物質を過剰分泌してしまう(「サイトカイン」とは、本来、免疫システム強化のための情報伝達を司る大切な物質)。
  2. 「炎症性サイトカインの過剰分泌」は、脂肪やタンパク質の分解、食欲不振等の脳神経への作用を引き起こす。すなわち「代謝異常及び食欲不振による摂取量の減少」である。その他、がん貧血の進行や発熱なども発生する。
  3. この、「炎症性サイトカインの過剰分泌」により様々な異常が起こっている状態が、体が「慢性炎症」の状態であるということ。がんにより、常に体が炎症状態になっているということである。
  4. さらに、この状況で、がん細胞は分解したタンパク質=アミノ酸を栄養として、さらに急速に増大していく。

このことは、つまり、がんは、がん悪液質によって患者の衰弱・消耗を引き起こすと同時に、自身の急速な増大・進行・転移を図っている、ということを示している。

なお、「がんでなぜ死ぬのか」ということであるが、これは大きく二つあるそうで、すなわち「がん悪液質」と「がんの増大」だ。

「がん悪液質」では、上に書いたとおり、低栄養状態が進行して元に戻らず、最終的に死に至る。また低栄養・消耗状態により感染症等のリスクも高まるので、それらも致死的な要因となる。

もう一つの「がんの増大」では、例えば、脳・肺など主要臓器にできたがんが大きくなることで、臓器が機能不全となれば死に至るし、消化管や器官を塞いでしまえば、それも致命的な状況になる。

このことから、がんの増大と並んで、がん悪液質とは「がんの本来的な病気としての姿」と言えるのだ。

 僕の当時の症状は、おそらく悪液質であったのだと思う。この時点では、僕の病期はステージⅡと言われ進行がんではなかったが、大きさとしてはそれなりのものになっていた。ここまで大きくなったがん腫瘍が及ぼす影響として、悪液質が発生したとしてもおかしくはない、ということのようだ。

悪液質にも「前悪液質、悪液質、抵抗性(進行性)悪液質」と段階があるそうで、このうちの「前悪液質」の状態だったのではないかなあと、素人考えであるが、思っている。

なお、夜間の多尿・頻尿については、片方の腎臓ががんに侵されたことで腎臓機能が低下した結果、という可能性は考えられる。体重や食欲不振についてはストレスによる影響もあったかもしれない。貧血についても、腎がんの症状の一つとしても挙げられているものだ。これらのことから、一概にこうとは言えるものではないし、そんなに単純な話でもないんだろう。

いずれにしても、これらの症状はすべて腎がんのせいであった、ということは確か。そしてそれは、1月始めまで続くのである。

 

<参考資料はこの辺>