腎がんなんて俺の人生に何の関係もないと思っていた

平成30年に腎がん(腎臓がん・腎細胞癌)が発覚してから、僕の治療と生活と仕事の記録

お金の話〜①医療費について

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このブログでここまであまり触れていなかったが大事な話があって、すなわちお金の話である。大きく分けるとトピックは二つ、一つは僕が今回始めることにした、免疫チェックポイント阻害剤に関する医療費の話と、もう一つは、がん保険等の医療保険の話なのだが、ここでは医療費についてメモしておきたい。

免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法というのは、何度も書いているとおり最新の治療法である。オプジーボとヤーボイの併用療法について言えば、腎がんに保険適用されたのが昨年8月だ。そして、最新なだけに薬価が非常に高額である。一般的なイメージとして、がんの治療は総じてお金がかかるような気がしているが、特にこの免疫チェックポイント阻害剤については、その高額っぷりも当初より話題になっていて、当時自分にはあまり関係ないと思っていた僕でも一般ニュースとして耳にしたのを覚えている。

発売当初の2014年9月には、オプジーボの薬価は100mgあたり72万9849円。当時のオプジーボの用法は、体重キロあたり3mgの量を2週間に一度投与するものであったので(現在は体重に関係なく240mgを2週間に一度投与)、体重70キロとして210mg。隔週で年間26回として

約73万円✕2.1✕26回≒3985万円!

これが、2017年2月には医療保険財政圧迫の懸念から厚生労働省による緊急薬価改定が行われ、半分に切り下げ。さらに2018年4月の薬価改定で27万8029円、2018年11月には17万3768円まで切り下げられた。当初からすると約4分の1、76.2%の切り下げである。この額で再度計算すると、(一回あたり240mgを年26回として)

約17.4万円✕2.4✕26回≒1085万円

これでも年間1000万円以上。もちろん個人の負担としては、医療保険(健康保険)により3割負担となり約300万円強、さらに高額療養費制度を利用すれば、最大で月に5万円まで抑えられる(注意:収入および加入の健保により異なります)。これで年間にすると60万円ほど。60万だって十分に痛いんだけど。個人的には私立文系大学とか私立高校の年間授業料くらいか?ただ1000万とか言われちゃうともう無理…なので、一応個人的に何とか捻出できる金額には下がる。

「オプジーボ」続く受難 用量変更でまたも大幅引き下げ…薬価 収載時から76%安く | AnswersNews

しかし忘れてはいけないのは、その個人負担した分の残りは、国の医療費すなわち医療保険財政から出ているということ。さらに言うと、当初の薬価から約4分の1まで価格が下がっているわけだけど、薬の適正価格というのは僕はわからないが、当初の価格というのは製薬会社がその薬にかかった研究開発費や材料費・人件費、シェアや売上による利益など諸々勘案した上で算出している数字なはず。結果的に厚生労働省により切り下げられているが、その切り下げ分は結局製薬会社の利益が失われる形で賄われていることになる。

つまり、僕がこれから使う薬の価格つまり治療にかかる費用というのは、その大部分が、国民・国の負担で賄われていたり、研究者・企業の多大な努力が支払われているということになるのだ。

もちろん僕はまだ死にたくない(だから治療したい)し、ちゃんと税金も保険料も支払って国の制度に参加している身なので、制度は最大限にありがたく利用させてもらうつもりだ。今回の薬だって治療のために開発された薬なわけで、その病気になった僕が使わなくてどうするという話なのだ。だけど、僕自身の気持ちの問題として、事実はきちんと認識して理解し、目を向けていなければいけないし、一人の国民として制度に参加しつつ制度を支えていかなければいけないよねと思う。本当にこの話は、みんなが考えないとだめじゃんって、思うのだ。まあ、僕の場合は行政かつ福祉や保健といった分野に携わっているので、なおさら思いは強いところなのだけど。

僕は、うちの子供たちにも普段からこの辺の話をするようにしている。中高生なら理解できるはずだ。例えばさいたま市では中学生まで医療費がかからないんだけど、それもタダでラッキーという話ではなくて(もちろんすごく助かっているのは事実)、かからない分はさいたま市が負担しているし、ざっくり言えばそれは結局のところ市民の税金などから出ていて、そうなるとふるさと納税で自分の住んでいる自治体以外に金渡すのってどうなのよとか…答えがどうであれ、そういう問題意識やリテラシーを高めることが大事かと思って子供と日々接しているんだけど、だいぶ話が逸れたのでこの辺で。

保険の話は、また次回。