腎がんなんて俺の人生に何の関係もないと思っていた

平成30年に腎がん(腎臓がん・腎細胞癌)が発覚してから、僕の治療と生活と仕事の記録

救急搬送、入院

10月20日の夜は頭痛と吐き気でほとんど眠れなかったが、翌朝も状況は変わらない。そのため早々に東医療センターへ行くつもりであったが、吐き気がひどく、妻の運転で助手席に乗って行くことも厳しい。おそらく途中で吐いてしまうだろう。結果、救急車を呼ぶことにした。

救急車が到着し、救急隊員が3名自宅リビングに入ってくる。僕は顔面蒼白で動けないので、三人がかりで運び出し、ストレッチャーに乗せる。去年ぎっくり腰で救急搬送された時と同じく、緑のシートを体の下に滑り込ませ、そのシートごと持ち上げることで患者(僕)を運ぶ。ストレッチャーに乗せられたのは家の中だったか外だったかは覚えていないが、とにかく自宅裏手の遊歩道上でストレッチャーに乗せられ、救急車に運び込まれる。救急車に乗る前に自宅二階を見ると、学校へ行く用意をしているであろう娘がベランダから顔だけ出して心配そうにこちらを見ていた。顔だけ出しているから動物みたいでちょっと面白かったのだが、僕には手を振る余裕もない。なお、息子はこの騒ぎに全く気づかずに二階で寝ていた(笑)。

ちなみに、自宅周辺は「木密地域」とまではいかないが割と狭い道が密集している。救急車は広い表側ではなく遊歩道に面した裏手側に停まっていたので、そちらに運び出されたのだ。自宅は、裏手の遊歩道に出られるように門扉が取り付けてあるので出入りはでき、また遊歩道のすぐ隣には車道もあるので、救急車への搬入に問題はないのだが、広い通りに出るには明らかに反対側すなわち表側からの方がアクセスしやすい。しかし、我が家はどうも地図上わかりにくいところにあるようで、宅配業者などが初めて来る際にはたいてい一度裏手の遊歩道側に来てしまう。今回の救急車も同じ状況だったようだ。

救急車に運び込まれたところで、前夜に続いて三回目の嘔吐。救急隊員に差し出されたバケツ?の中に吐いたので大惨事にはならずに済んだ。もはや何も出ないはずなのだが、それでも結構な量を吐いた。前日の朝食を最後に、食事だけでなく水分も取れていない上、これだけ吐いていては脱水症状の恐れもあるぞ。

救急隊員には妻から事情を伝え、すなわち腎がんの治療で免疫療法をしており、その副作用での症状(吐き気と頭痛)であること、かかりつけの病院が荒川区東京女子医大東医療センターであること、かかりつけ医から副作用の際には来院と言われていることなどを話し、通常であれば自宅から最寄りの病院へ搬送ということになろうが、今回は僕の特殊な事情に鑑み、東医療センターへ搬送してくれることになった。浦和の自宅から荒川区の東医療センターまでそれほど遠くないということもあったと思うが、ありがたい。近所の病院に連れて行かれても意味ないもんな。

病院までは一般道路でおよそ35分ほどで到着した。8時55分頃には着いたと思う。知らなかったのだが、救急車は搬送時に高速道路を使わないのだそうだ。渋滞にはまってしまった際にどうしようもなくなるから。一般道路なら渋滞の場合でも回避方法があるが、高速道路だとそうはいかない。確かにね。

病院到着後は、救急車だけあって受付から診察まで非常にスムーズ。これだけでも救急車で来た甲斐がある。この吐き気と頭痛のコンディションで、一般外来で来ていたら…ちょっと無理だったと思う。

ストレッチャーのまま外来棟四階の泌尿器科まで運ばれ、ここで病院へバトンタッチ。死にそうになりながら救急隊員にお礼を言う。看護師に症状を告げ、食事を取れていないことと脱水の恐れがあることから、まずは栄養と水分補給のため点滴を行い、その後、各種検査へと向かう。頭痛、吐き気そして筋肉痛という症状から考えられる疾患はすべて調べ、一つずつ排除していくのだ。具体的には、

  • 血液検査(2回)
  • 尿検査
  • CT検査(頭部)
  • CT検査(体、造影剤使用)
  • 造影剤MRI検査(頭部、造影剤使用)
  • エコー検査(腹部)
  • エコー検査(心臓)
  • レントゲン
  • 整形外科での診察(筋炎疑いのため) 

必ずしもこの順番ではないが、覚えている限りこれらの検査を、頭痛と吐き気でグロッキーなまま受けた。なかなかの苦行である。なお、僕はもはや立って歩けない状態だったので、この日はずっと車椅子で移動した。初めのうちは看護師に押してもらっていたが途中から妻に交代。病院内には微妙にスロープのところがあり、そこを押すのはなかなかの力仕事だったと思う。すまんのう…

検査が一通り終わって診察室に戻り、先日受診したH先生より検査結果の説明を受ける。まず、血液検査の結果から、前回の診察時にわかっていた甲状腺ホルモン値の低下に加え、副腎機能の低下と肝機能の低下、これらが疑われるとのことであった。これは間違いなく、オプジーボとヤーボイ(免疫チェックポイント阻害剤)での治療に伴う副作用だ。この場合、ステロイド剤の投与がファーストライン治療になる。頭痛については、CT及びMRIともに結果に異常は見られず、脳疾患の可能性は低いとのこと。H先生からは入院加療を強く勧められ、もちろん僕も帰るつもりは全くなく、そのまま入院となった。なお、ここまでずっとH先生が対応してくれていたのだが、横でK先生も助言してくれていた模様。僕はグロッキー状態でわからなかったのだが、妻いわく声が聞こえたとのことだ。

ということで、ステロイド剤、具体的にはプレドニゾロン150ccを点滴投与される。並行して妻が入院手続きなどを済ませ、病室へ。

その後は、午後6時頃にK先生が回診に来て、改めて説明をしてくれた。いわく、概ねH先生の話したとおりだが、

「肝機能よりもおそらく副腎機能の低下でしょう。きつい頭痛もそのせいで、脳にむくみが出ていたのだと思う。ステロイド投与で良くなると思います。」

とのことであった。なるほど。だいぶ納得。

ステロイド剤を投与してもらったものの、夜にはまだ頭痛と吐き気が収まらず、きついので深夜にナースコールしてロキソニンを処方してもらう。これは1時間ほどで効いてきて、前夜に比べれば比較的(かなり)よく眠ることができた。

結局、この日は最後まで調子が戻らなかった。食事もまだほとんど取ることができず、血糖値も下がっていたので、夜間に栄養分を追加で点滴してもらう。さすがの僕もスマホを一度も触らずじまいで…いや、そもそもスマホを見る気にもならなかったのだ(入院になったことを職場へ連絡する際も、妻から電話してもらったほどである)。