腎がんなんて俺の人生に何の関係もないと思っていた

平成30年に腎がん(腎臓がん・腎細胞癌)が発覚してから、僕の治療と生活と仕事の記録

続・精密検査、そして判明

「微熱とだるさですか…そうなると話は違ってきますね。」

N院長が言った。

「ここまで消化器系の検査をしてきた上で、その症状があるとなると…いくつか原因は考えられます。微熱とだるさがあるということは、慢性炎症を起こしていることが疑われる。それは、例えば結核などの感染症や、どこかに腫瘍があることからも起こり得ます。」

なるほど…だるいとか微熱があるとかって、大事なことなんだ…すみません。

「ですから、全身のCTを撮りましょう。」

N院長の力強い声。僕よりだいぶ若いのに…頼りになるわ。

「貧血についても、それ自体が原因ではなく、熱とだるさからの貧血、という方が考えられます。いずれにしても全身のCTを撮った方が良い。」

断る理由はありません。その場でお願いをした。

CTについては病院ではなく、最近は画像専門の医院があるそうで、土日もやっており予約が取りやすいとのこと(大きな病院だと結構待たされるらしいですよ)。たぶん、今にして思えば、僕の状況からあまり時間をかけるべきでないと思ってくれたのかもしれない。近場だと大宮にその医院があり、その場で二日後の日曜に(早い!)予約を取ってくれた。

予約してもらったとおりに、11月18日日曜日の午前、画像検査・診断専門の「メディカルスキャニング大宮」へ。大宮駅から徒歩圏内でアクセス良し。簡単な診察をしてCT撮影後、データをN内科へ直接送ってもらうよう手配をして終了。N内科には6日後の24日土曜日、結果を聞くための予約をしてある。

バタバタと一通りの検査が終わり、さていったい何なんだろうねと妻と話しながら三日ほど経った水曜日、携帯電話に見慣れない着信があることに気づく。電話番号を検索してみると、N内科の番号じゃんか。なんだかわからんが、嫌な予感。一応自宅に連絡し、息子に聞けばやはりN内科から電話があったと。特に用件は言われなかったとのことだったが、本当に嫌な予感がしたので、すぐに折り返してみるも、営業時間外となってつながらず、翌日の木曜に朝イチでかけてみることにする。

ちなみにこの週は、金曜日が祝日で週末三連休。当時、僕の仕事は通常だと金曜日が最大限に忙しいのだが、この週は一日前倒しで木曜日に業務のピークが来ていた。普通なら休める状況にない。しかし当時、一連の体調と検査経緯は細かく上司にも報告していて、職場に「なんかちょっとヤバいんじゃない?」感をだいぶ醸し出していたのではないか。

そして木曜朝。早朝から忙しく動き回る合間を縫って、9時早々にねもと内科へ電話。事務スタッフに事の次第を告げると、「院長が直接お話したいことがあり、できれば予約日より早く来ていただきたくお電話した」だってさ。仕事が一段落してからでも間に合ったのだが、このときばかりは、精神的に仕事に集中できる状態ではなかった。これから修羅場を迎える職場を尻目に、無理を言って早退させてもらい、N内科へ直行した。同時に妻にも連絡し、とりあえず一人で行くから、と伝える。

なお、この一ヶ月ほどの検査経過について、もちろん妻には逐一状況を伝えていたし、我が家は基本的にオープンな家庭を自負しているので、子供たちともざっくばらんに僕の体調について話をしていた。今回、ねもと内科から早々に連絡が来ていたことも家族で共有していて、散々自分でも「なんだろうなー、嫌な予感がするなー」なんて、子供たちにつぶやいていたところだった。

 

N内科には11時頃に到着。診察室へ呼ばれ、N院長の前へ。

「先日のCTの結果で、大事なお話がありご連絡しました。」

なんでしょうか。

「大事なお話ですが、今日はお一人ですか。」

いや一人だよ。家族連れて来いなんて言ってなかったじゃんか。

「お一人で大丈夫でしょうか。」

はい。一人でいいです。

「CT検査の結果、左の腎臓に異常が見つかりました。」

異常とな。何が。

「このとおり、右と比べると、このように肥大し、腫れが見られる。高い可能性で『がん』であろうと思われます。」

 

聞いた瞬間にショックを受けるというよりも、ある程度の悪い話は予想しつつ、ぐんぐんと衝撃のボルテージが上がってマックスへ。そんな感じである。

これがいわゆる「告知」か!

 

その後、画像専門医の所見を見せてもらったり、CT画像を見せてもらったり。確かに左側の腎臓の方が、明らかに大きい。下部が腫れて大きくなっている感じだ。N院長いわく、「見る限り転移はなさそうだが、うちではこれ以上詳しいことは言えない(ステージとか)。紹介状を書くので、すぐに専門病院で診てもらってほしい。一般に腎臓がんは進行が遅く、おそらく10年程度はかけてここまで大きくなったと思われる。一、二週間でどうなるものではない。ただ早いに越したことはない。紹介状はどこの病院宛てでも書くので、三連休を使って家族ともよく相談し、病院を探したらどうか。今はネットにも情報が多くあるので」とのこと。病院については、近くであればということで、さいたま市立病院、さいたま赤十字病院、埼玉県立がんセンターを参考に教えられる。

 

一通り終わり、N内科を出て妻に電話。車で迎えに来てもらう。到着するまでの間、意外と何も思いが出てこない。ボーッと待つ。

 

妻が到着し、助手席に乗って走り出してから、結果を告げた。淡々と落ち着いて説明しながら、途中で涙が出てくる。止まらない。泣きながらいろんなことを考えた。いや、実はいろんな思いが出てくるんだけど、何もまとまらずに消えていく。そんな感じだった。妻はハンドルを握りながら、話を聞いてくれていた。