腎がんなんて俺の人生に何の関係もないと思っていた

平成30年に腎がん(腎臓がん・腎細胞癌)が発覚してから、僕の治療と生活と仕事の記録

腎がん手術の、仕事への影響について

さいたま市立病院でのM先生受診から三日後、手術方法や日程等を決めるために再び泌尿器科受診することとなったので、その前に職場と相談しなければならない。

連休を挟んで五日振りに職場へ出勤し、直属の上司含め関係方々に私の病状、今後の治療予定など諸々について報告、そして相談である。

この当時の僕の仕事の状況といえば、少し特殊であった。2年前に昇任試験(一次試験)に合格した後、「管理職候補」という身分で2年間のローテーション勤務をこなし、昇任への最終合格に向けた口頭面接試験(最終試験)を間近に控えた身であった。

最終試験は12月半ばに実施されることが決まっていた。すなわち、その直前のタイミングでの腎がん判明であったわけである。腎がん治療のために不在となる間、僕の担当業務をどうするかということに加えて、この最終試験をどうこなすかについて考えなければならなかった。

担当業務については、そのための人を補充することはできず(そもそも特殊な業務なので、人員補充があっても任せることは難しいのだが)、上司・同僚に少しずつ負担をしてもらうことでカバー。職場が全力で穴を埋めるために動いてくれたわけで、感謝しかない。ただ、しょせんはたかが一サラリーマンの仕事で「替えが利かない」仕事なんていうものはないし、組織としてそのような状況があってはいけないのだ。改めてそう思う。

もう一つの方は、まさに「替えが利かない」話である。腎がんが判明した直後にはすっ飛んでいたが、少し落ち着いた後すぐに気になったのは「最終試験どうしよう」。

最悪、最終試験を「受けない」という選択肢はあり得る。その場合、一年後に最終試験を再受験ということになるが、苦労して一次試験に合格した後、ハードな職場で自分なりに頑張ってきた2年間である。正直、一年延びることはモチベーション的につらい。

また、今のところは手術をして体調を戻し、復帰する予定だが、こればっかりは絶対に、ということは言えない。最終試験を見送って、一年後に果たして昇任まで辿りつけるのか?

もっと言えば、子供たちはその時高校1年と中学1年、2年後にはダブル受験を控えている。金がかかる。父親としての正直な気持ちとして、早く昇任して給料を上げて、安定して仕事をしたいという思いがある。

そんな先の見えない状況で責任ある立場になっていいのか?という批判はあるだろうし、その選択をする人もいると思う。しかしあくまで僕は、幸いにも手術で治して復帰できる見込みが高いのであれば、それを目指して今あるチャンスは掴みたいと考えるのだ。

もちろん、そう思えるのは僕の病気の見通しが見えてきたからで、もっと重い状況であれば(何カ月も入院治療が必要であったり)すっぱりと諦めざるを得なかった。「がん罹患」という最悪なバッドラックの状況で、そこだけは運が良いと前向きに考えることにする。

M先生の話では、手術する場合、全部で9日間程度の入院が必要とのこと。入院後もしばらくは自宅療養となるだろうから、それを考えた場合にどのようなスケジュールを組めば良いか。

結論から言えば、関係各所と相談し、その程度で済むのなら、自宅療養期間を考慮しても、日程を外せば最終試験を受けることはできるだろう、ということになった。僕の状況(体調と治療の見込み)から判断して、人事への報告も、まずは最終試験を受けてから。

組織の立場として考えれば、人材不足の中、ここまで手間暇かけて育てた管理職候補を、昇任直前にできるだけドロップアウトさせたくないというのが本音だろう(もちろんこれは僕にとっては大変ありがたいこと)。

なお、この二日間で、人事上の相談もあって何人もの幹部と話したが、皆一様に温かい言葉をかけてくれた。これは本当に涙が出そうになった。上の人間に恵まれるというのは、これもまたありがたいものである。